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2019-20年秋冬オートクチュールコレクション総括。ディオールやシャネルなど5メゾンを徹底レビュー

6月30日~7月4日にパリで開催された2019-20年秋冬オートクチュールコレクション。デザイナーの才気と職人の高度な技を結集させたドレスの数々は、見る者を夢の世界へと誘ってくれました。最近では公式サイトやSNSを通じてコレクションの様子をリアルタイムで配信するブランドも増えていて、管理人hodakaもインスタグラムでその様子を熱心に追いかけていたファンのひとり。そこで、今シーズンの中で特に心惹かれたブランドを5つ厳選してレビューします!

漆黒の世界で女性の美しさとしなやかな強さを提示してみせた「DIOR(ディオール)」

会期序盤の7月1日に登場したディオールフェミニストとして知られるクリエイティブ・ディレクターのマリア・グラツィア・キウリは、今回も女性の強さとしなやかさを印象づけるようなメッセージあふれるショーを展開しました。

カリアティード(古代ギリシャ神殿建築に見られる円柱の役目を果たす女性立像)に着想を得たという今回のコレクション。会場となったムッシュウ・ディオールの元邸宅の内部は、床から天井までモノクロームのグラフィックや装飾に覆われています(女性アーティストのペニー・スリンガーの手によるもの)。そこにまず現れたのは、ディオールのミューズであるルース・ベル。「are clothes modern?(服はモダンか?)」という刺繍を施した真っ白なロングドレスを纏ったその姿は、まさに女性立像のような神々しさ。

 
 
 
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Exploring the relationship between couture and architecture, with nods to the universe of Austrian-American architect Bernard Rudofsky, #MariaGraziaChiuri delivered a breathtaking Autumn-Winter 2019-2020 #DiorCouture show in the House's birthplace: 30 Avenue Montaigne in Paris. The almost entirely black collection and set-up symbolized a return to fundamentals, to the foundations of Haute Couture, confronting it against contemporary lifestyles. Discover its first look, a divine draped white dress embroidered with the name of an exhibition staged by Rudofsky at the MoMA in the 1940s, titled 'Are Clothes Modern.' Check out our Instagram Stories live to discover it in its entirety.⁠ #DiorCouture

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その後は、黒一色のドレスを纏ったモデルが続々と登場。黒いベール付きのトーク帽を被ったモデルたちが見せるのは、クラシカルでありながらどこか抜け感のあるルックの数々です。修道女や未亡人を連想させるような禁欲的な雰囲気とは相反して、ドレープの美しさやエアリーなシルエットを強調させたドレスはどれも軽やかでエフォートレス。精緻なレースや羽根の装飾など、オートクチュールならではの技巧も随所に見られ、乙女心をときめかせてくれました。

サーカス小屋を舞台にした昨シーズンのファンタジックなショーとはガラリとムードを変えつつも、女性のボディの美しさに注目しているという点では同義であった今回のショー。女性の美しさと強さ、そしてこれからの時代にあるべき女性像を一貫して提示し続けるマリア・グラツィアの思想が、骨太なショーに凝縮されているようでした。

民族と文化の多様性、そして女性への賛美をカラフルなルックで表現した「VALENTINO(ヴァレンティノ)」

ディオールとは180度異なる切り口で、女性の美しさと豊かさを表現してみせたのがヴァレンティノ。クリエイティブ・ディレクターのピエールパオロ・ピッチョーリは、男性ならではの視点で女性への賛美をカラフルなドレスに込めて提示してくれました。

トップを飾ったのは、ボタニカルな花模様と太いフリンジが存在感たっぷりなイエロードレス(上投稿の2枚目)。まるでアフリカの民族衣装のようなこのドレスを皮切りに、東南アジア風のヘッドドレスやオリエンタルな刺繍、エスニックなファーやフリンジの被り物など、世界各地の民族服を連想させるディテールのルックが続きます。それもそのはず、今回のコレクションでピッチョーリが着目したのは「多様性」と「包括性」。民族や文化の異なる人々がありのままの姿で共存し合える世界の豊かさを、さまざまな素材と色彩を贅沢に用いたドレスによって表現してみせました。

カイア・ガーバー、ジジ・ハディットなどの今をときめくイット・モデルが次々と登場する中、圧巻の存在感を放っていたのが『VOGUE』史上最年長の73歳で表紙を飾ったことでも知られるモデル兼女優のローレン・ハットン。目の覚めるようなグリーンのドレスとイエローのブーツをエレガントに着こなし、年を重ねてもなお美しい女性像を軽やかに体現していました。

ラストルックには、フリルやリボンをふんだんにあしらったパープルドレスが登場。このドリーミーなドレスを黒人モデルのアドゥ・アケチが担ったことにも、ピッチョーリの強いメッセージが込められているような気がします。世界中で生きとし生ける女性に拍手を――そんな陽性なムードに溢れたショーでした。

ジェンダーも固定概念も突き破り、息を呑むようなデカダンスを構築した「Maison Margiela(メゾン マルジェラ)」

近年のコレクションと同様、男女合同ショーという形で行われたメゾン マルジェラによる“アーティザナル”コレクション。クリエイティブ・ディレクターのジョン・ガリアーノが見せたのは、情報化社会によって固定化された概念や常識にアンチテーゼを突きつけるような、挑発的なショーでした。

フランス在住のアーティストであるカテリーナ・ジェブによるヌード写真が投影された後、ランウェイに現れたのは肌の一部を露わにしたモデルたち。伝統的なテーラードジャケットを羽織りながら胸元や太ももが剥き出しになっていたり、ロングドレスを纏いながら胸元のコルセットが見えていたりと、どこかアンバランスなムードを放っています。もちろん男性モデルがロングドレスを着るなど、従来のマルジェラのショーで見られるジェンダーレスな着こなしも多彩。

その後も、スウェット素材をドレスに用いたり、裏地と表地を反転させたり、穴だらけの布地をジャケットに仕立てたり――と、およそオートクチュールとは思えない常識外れなルックが続きます。にもかかわらず孤高の美しさを放つのは、ひとえにガリアーノによる革新的かつセンシュアルなデザイン力と、細部まで生き届いた職人技があってこそ。なかでもグラフィックをプリントした生地で仕立てられたドレスやジャケットの、息を呑むような美しさは圧倒的でした。

ランウェイの床は全面ガラス張りになっていて、見る者をさらに迷宮へと誘い込んでいくかのよう。創業者であるマルタン・マルジェラによる反モードの精神に、ガリアーノによる肉感的なデカダンスを融合させたショーは、今シーズンも独特の空気と強烈なメッセージを放ちまくっていました。

スペクタクルかつ芸術的なショーでブランドの歴史を綴った「FENDI(フェンディ)」

ブランドの本拠地であるローマで行われたフェンディのショー。元クリエイティブ・ディレクターであり、モードの帝王と謳われた故カール・ラガーフェルドが今年2月に亡くなってから初のオートクチュール・コレクションとあって、大きな注目を集めました。その内容は、カールとともに歩んできた54年間の軌跡を讃えるような、スペクタクルかつ芸術性にあふれたものでした。

ショー会場であるパラティーノの丘に現れたのは、マッシュルームカットのモデルたち。どこか1970年代のムードを纏った彼女たちが、幾何学模様や大理石のようなモチーフを施したスーツやドレスを着こなして闊歩します。クリエイティブ・ディレクターのシルヴィア・ヴェントゥーニは、54年間にわたるカールとフェンディによる協業を54のルックで表現してみせました。アースカラーを基調にしたルックは、背後に佇むローマの古代遺跡とも相性抜群。しかしオーガンジーやシフォンなどのエアリーな素材を多用しているため、重々しさを一切感じさせません。

 
 
 
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#FendiCouture Fall/Winter 2019-2020 Collection #TheDawnOfRomanity Creative Director: @silviaventurinifendi

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ブランドの象徴であるファーの使い方も見事。小さなパーツ状にしたファーをパッチワークのように継ぎ合わせたり、コートの裏地や裾にポイントとして配したり――と、一般的には重くなりがちなファー素材を軽やかに見せる趣向が随所に散りばめられています。これぞ、フェンディのクラフトマンシップが成せる技。多様な素材をミックスすることで剛柔、静動などの両端を兼ね備えたルックの数々は、たまらなくロマンチックで芸術的でした。

かつてはトレビの泉を舞台にショーを行うなど、ローマの街とともに歴史を刻んできたフェンディ。そんなブランドの精神と、半世紀以上にわたってブランドを推進してきたカール・ラガーフェルドへのオマージュをありありと感じさせる感動的なショーでした。

卓越した職人技をもとに、シンプルかつ究極のエレガンスで魅せた「CHANEL(シャネル)」

フェンディ同様、元クリエイティブ・ディレクターのカール・ラガーフェルドがこの世を去って以来初のクチュールコレクション発表となったシャネル。お馴染みの会場であるグラン・パレで展開されたのは、シャネルらしい凛としたエレガンスが漂う上質なショーでした。

 
 
 
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Looks from the Fall-Winter 2019/20 #CHANELHauteCouture show, presented in a library setting at the Grand Palais in Paris. #CHANEL

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グラン・パレを舞台に、巨大な舞台装置を用いた壮大なショーを披露することが恒例となっているシャネル。新クリエイティブ・ディレクターのヴィルジニー・ヴィアールは今回、この場所に円形の図書館を出現させました。ファーストルックのロングコートドレスを皮切りに、ポニーテールを結わえたモデルたちが着こなすのは、ブランドの根幹でもあるツイードのスーツやドレス。太い糸や細い糸、単色や混合糸などで丹念に織り上げられたテキスタイルが、モデルの動きに合わせて優美な陰影を放っていきます。

総スパンコールのジャケットや羽根細工をふんだんにあしらったドレスなど、アトリエの職人技が冴え渡るディテールも見事。その技巧の素晴らしさが、衣服のシンプルなシルエットと相まってさらに際立つ形となっています。これこそが、シャネルならではのエレガンスの極地。凛とした佇まいの中にそこはかとないラグジュアリーが漂うその装いは、世界中の女性が永遠に憧れる普遍的な美しさと呼べるものではないでしょうか。

ラストルックには総プリーツのフェニミンなピンクのガウンが登場するなど、新機軸も提示。シャネルのDNAを王道のスタイルで見せつつ、ジャケットやパンツの絶妙なバランスには現代らしい解釈も読み取れるなど、いい意味で肩の力の抜けたショーでした。その充実した内容に、新生シャネルの今後がますます楽しみになりました。

デザイナーと職人の魂が宿る服飾の数々は、一級の芸術品そのもの

いかがでしたか?今回は5つのメゾンのみを取り上げましたが、他にも印象的で美しいショーを発表したメゾンは数多くありました。プレタポルテ(高級既製服)以上に手の込んだ縫製や装飾が施されたオートクチュールコレクションは、まさに一級の芸術品を鑑賞するようなもの。一般人には到底購入できるような代物ではありませんが、見ているだけで心がうっとりとするものです。

デザイナーの精神性や、いま人気のモデル事情などが垣間見えるのも面白いところ。次回のオートクチュールコレクションは来年1月に開催される予定なので、興味のある方は気になるブランドのSNSなどをチェックしてみてください!